メッキ工場はきつい？給料が安い？勤務歴10年のリアルな実態とは！

メッキ工場と聞くと、「きつい」「汚い」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。

また、メッキ作業と言っても実際に何をするのか分からない人も多いと思います。

結論、「きつい時もありますが、やりがいも十分にある仕事です」

メッキ工場で、10年以上勤務してきた経験から、何がきついのか、どんな作業内容なのかをこの記事で詳しく解説していきます。

メッキ職場に興味のある方、メッキ作業って何？って思いの方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

メッキって何？

メッキとは、金属や他の材料の表面に、薄い金属層をコーティングする技術のことです。

このプロセスによって、素材の外見を美しくしたり、錆びにくくするなど、さまざまな目的で使用されます。

メッキの方法には、主に電気を使う「電解メッキ」と、化学反応を利用する「非電解メッキ」があります。電解メッキでは、電流を使ってメッキ材を溶かし、対象の表面に定着させます。

一方、非電解メッキは電気を使わずに特定の化学反応を起こしてメッキ層を形成します。

電解メッキの特徴	非電解メッキの特徴
非電解めっきに比べ設備コストが安い メッキ槽の管理がしやすい	複雑な形状でも膜厚が均一に生成される 耐摩耗性が優れている

この技術により、製品はただ美しく見えるだけでなく、耐久性が増し、長持ちするようになります。メッキは自動車の部品、ジュエリー、家電製品など、私たちの身の回りにある多くの製品に使われている重要な工程です。

メッキ工場の仕事が「きつい」と言われるデメリット8つ

メッキ工場の仕事は、以下の理由からきついといわれています。

①体力的な負担がある

メッキ作業は体力を要するという心配があることは確かです。

特に夏場の高温多湿の作業環境は、熱中症のリスクを高め、日常的に体力を求められます。このような状況は、体力に不安を感じる人にとって、検討すべき重要なポイントになります。

しかし、工場では従業員の安全と健康を守るために、様々な対策が講じられています。

メッキ作業における体力的な心配は理解できますが、現場での安全対策や環境改善努力によって、その心配を大きく軽減することが可能です。 このことは、メッキ業界で働くことを考えている人にとって、安心材料の一つとなり得ます。安全と健康を第一に考える工場の姿勢は、従業員にとって働きやすい環境を提供することに繋がっています。

②単純作業が続く

メッキ作業は、材質に応じた処理手順の遵守が求められ、部品量が多い場合には、同じ作業の繰り返しになることがあります。

このように、特定の作業フローを厳守する必要があるため、作業の単調さからやりがいを感じにくいと感じる声も少なくありません。繰り返しの作業は、人によってはやりがいを感じにくいという意見も多いです。

③職場環境が悪い

メッキ工場での作業は、処理槽に酸性やアルカリ性の化学薬品を多く使用します。

これらの薬品から発生する蒸気は、吸入すると健康に害を及ぼす可能性があるため、マスクやゴーグルといった保護具の着用が絶対に必要になります。

④交代勤務がある

メッキ工程の性質上、部品のメッキ厚さに応じて必要な浸漬時間が長くなることは避けられません。

これが夜勤や早朝勤務をしなければいけなくなる理由です。

特に夜勤は、生活リズムの乱れをもたらす大きな原因となります。人間の体内時計は、自然な日光によってリセットされるため、夜間の活動は睡眠パターンの乱れ、睡眠不足、そしてそれに伴う疲労感を引き起こしやすくなります。

⑤スキルがつかない

メッキ工場での仕事は、特殊な技術や専門スキルを必要としない作業が中心です。

このため、メッキ作業の経験が転職で他の職種に直接役立つ場合は少ないと言えます。

⑥給料が低い

メッキ業界では、他の製造業と比べても年収が平均的であることが一般的です。

しかし、未経験からスタートして半導体などの高精度メッキ技術を要する分野への進出は、収入向上の大きなチャンスとなり得ます。

メッキ加工は、製品の機能性、耐久力、美観を向上させる重要な工程です。

この技術への需要は今後も継続して高まることが予想されます。初年度の収入だけに目を向けるのではなく、長期的なキャリア構築と技術習得の機会を評価する視点が重要です。

⑦取り扱う薬品が危険

メッキ工場での作業は、酸系、アルカリ系、シアン系など、様々な薬品を取り扱います。

これらの薬品は、強烈な匂いのみならず、液体が飛散した場合には作業着を痛めたり、肌に触れるとやけどの危険をもたらすことがあります。保護具の着用が厳格に義務付けられているのは、こうしたリスクを最小限に抑えるためです。

しかし、これらの危険性は、メッキ作業における顕著なデメリットとして認識されており、作業環境の安全性確保には常に高い注意と配慮が求められます。

⑧納期に追われる

メッキ工程は、通常、材料から機械加工で成形され、製造プロセスの最終段階に位置づけられます。

このため、メッキに至る前の工程に遅れが生じた場合、通常よりも短い納期での納品が求められることがあり、休日出勤を求められる場合もあります。

メッキ工場で働くメリット

メッキ工場での仕事は、確かに厳しい環境であることが多いですが、そこで働くことのメリットも多くあります。

1.専門知識の習得

メッキ工場で働くことで、化学、電気、材料など、メッキに関する幅広い専門知識を習得することができます。

メッキ工程は、様々な科学技術が複合的に用いられています。具体的には、以下のような専門知識を習得することができます。

メッキ工場で働くことは、専門知識を習得し、キャリアアップを目指す人におすすめの仕事です。

2.安定した需要

メッキ工場は、社会インフラを支える重要な役割を担っており、今後も安定した需要が見込まれます。

メッキは、自動車、家電、精密機器など、様々な製品に用いられています。これらの製品は、日常生活に欠かせないものであり、今後も需要は増加していくと考えられます。

また、近年は、環境への配慮から、従来のクロムメッキに代わる、環境負荷の少ないメッキ技術の開発が進んでいます。

これらのことから、メッキ工場は、今後も安定した需要が見込まれます。

3.安全意識の向上

メッキ工場で働くことは、製造業における安全意識と薬品取り扱いにおける安全意識を同時に高められます。

日常の業務には、メッキ溶液を含むさまざまな薬品を取り扱います。

工場では、薬品が不適切に扱われた場合、健康への害を及ぼすリスクがあるので、安全な管理方法を学び、安全教育を定期的に受けることで、従業員は安全対策を身につけます。

その結果、安全に対する認識が深まり、事故の予防につながります。

メッキ工場勤務の気になる年収

メッキ工場勤務の年収は、一般的には平均的な水準と言えます。

2021年に厚生労働省が発表をしている賃金構造基本統計調査によると、めっき工の平均年収は404万円で、職業年収ランキング244位の平均年収となっています。

メッキ工場の仕事は、製造業の中でも比較的、製品の最終工程を担うことが多いため、年度の初めから年度末にかけて特に忙しくなる傾向があります。

この時期には、製品の出荷準備や納期に追われるため、残業が増えることが一般的です。

ただ、残業が多くなるということは、年収のアップにもつながりますが、それだけ多くの労働時間が発生し、体力的にも負担が多くなるのも事実です。

メッキ工程の具体的な流れ

メッキ工程の主な流れは3つあります。

①前処理

メッキを施す前に、金属表面の汚れや油分を除去し、メッキ液との密着性を高めるために表面を活性化させます。主な作業としては、洗浄、脱脂、酸洗などがあります。

ここでの、処理が不純分だと、メッキの付きに影響が出るので重要な工程になります。

②メッキ処理

メッキには、先述にのべたように電解メッキと非電解メッキがあります。

電解メッキは、メッキ液に電流を流すことで、金属イオンが金属表面に析出 (せきしゅつ) してメッキ膜を形成します。メッキ液の種類や電流の条件によって、メッキ膜の厚みや質感が変わります。

非電解メッキは、電気を使わずに金属表面に別の金属をコーティングする技術のことで、化学反応を利用してこれを行います。この方法により、均一で密着性の高いメッキ層を形成することができ、複雑な形状の物体にも均等にメッキを施すことが可能です。

③後処理

メッキ後の製品を洗浄し、必要に応じて乾燥や熱処理を行います。また、メッキ厚さの品質を検査する工程もあります。

メッキ作業の役割

メッキ作業は、メッキをするだけではなく、主に3つの職種があります。

それでは、各作業について解説していきますね。

メッキ作業をする人

まずは、メッキ作業をする人の作業内容です。

部品にメッキを施すには、メッキ槽に部品を入れるわけですが、メッキ槽に入れるまでに、部品を前処理工程をします。そのあとに、メッキ槽に入れて、指定された膜厚（メッキの厚み）を生成します。

①治具の装着

メッキ工程では、適切にメッキ処理をするために、部品を固定する「治具」を装着します。

治具を使うことで、部品はメッキプロセスを通じて安定した状態を維持し、その結果、均一なメッキ層が形成されます。

金属が溶液の中で自由に動かないように取り付けることが重要になります。

②脱脂処理

鉄部品などのさびやすい材質は、油で防錆されてくることが多いです。

油がついた状態では、メッキ不良を起こす原因になるので、まず表面の脂肪分や汚れを取り除く脱脂作業を行います。この工程は、メッキの品質を左右するため、非常に重要です。

③水洗作業

脱脂液を完全に取り除くため、製品を水で洗浄します。この水洗作業は、脱脂だけでなく、各工程の間にも行われ、製品の表面を常に清潔に保ちます。

④電解脱脂

製品表面の細かいチリやスケールを取り除くために、電解脱脂を行います。

⑤酸活性処理

表面の酸化膜を取り除き、メッキが付きやすくするための酸活性処理を施します。この処理によって、メッキ層の密着性が向上します。

⑥メッキ処理

準備された製品をメッキ液につけ、実際にメッキを行います。この工程で、製品表面に金属層が形成されます。

工場で使用される主なメッキ

銀メッキ	銀は、優れた耐摩耗性、高い潤滑性、広い使用温度範囲、良好な耐食性、そして優れた導電性を兼ね備えた多才な金属です。これらの特性により、銀は医療機器に最適な素材となっています。
クロムメッキ	車やバイクパーツなど、私たちの生活に身近な金属製品に多く用いられているのが、クロムメッキです。 高い耐食性、硬度、耐候性、光沢性、熱反射性を誇り、金属製品を長期間美しく保ち、機能を向上させる役割を果たします。
ニッケルメッキ	ニッケルメッキは、銅、真鍮、ステンレスなどの金属に直接施すことができ、高い耐食性を付与します。屋外で使用される建築材料や自動車部品、精密機器など、錆や腐食による劣化を防ぎ、長寿命化に貢献します。
亜鉛メッキ	亜鉛めっきは、鉄を空気や水から守り、錆や腐食を防ぐ役割があります。鉄鋼材料の防錆性に優れており、建築材料や自動車部品などによく使われます。
銅メッキ	銅メッキは、電気伝導性と熱伝導性に優れたメッキです。電子部品や電化製品などによく使われますが、工業用では浸炭防止用として処理するのが一般的です。 鉄鋼製品は、表面が炭素と結合して硬くなる「浸炭」という現象が起こることがあります。しかし、必要な部分だけに浸炭を施したい場合や、浸炭による変形を防ぎたい場合は、メッキによって表面を保護する必要があります。

⑦乾燥作業

最後に、エアージェットや乾燥炉を使用して製品を乾燥させます。乾燥は、メッキ層を安定させ、最終製品の品質を確保するために必要です。

マスク作業をする人

次に、マスク作業をする人です。

メッキ作業は部品に対して、メッキを施すわけですが、部品の範囲にもメッキを付ける場所、メッキをしない場所などがある部品もあります。そのメッキを付けない場所には、マスキングと言ってマスク作業をする必要があります。

主な、マスク作業としては

などが多いですね。

仕上げ作業をする人

最後に、仕上げをする人です。

メッキが施されてきた部品に対して、マスキングされた場所にバリが立っていたりする個所に、竹串などで除去していきます。

メッキ工場の仕事に向いている人

メッキ工場の仕事は、体力的な負担や危険性、環境への負荷など、いくつかの点で「きつい」と言われることがあります。

自分に合っているかどうかを判断するには、以下のポイントを参考にしましょう。

体力に自信がある

メッキ工場の仕事には、体力的な負担が大きい作業があります。体力に自信がない人は、きついと感じるかもしれません。

メッキ処理における作業時間は、主に前処理の段階に限定されています。それ以外の時間帯では、マスキング作業や仕上げ、さらには書類作成などの業務に取り組みます。そのため、毎日立ち続けたり、絶えず動き回っているわけではないというのは覚えておくといいでしょう。

ものづくりに興味がある

メッキ工場の仕事は、ものづくりの過程に直接関わる仕事です。ものづくりに興味がある人は、やりがいを感じられるでしょう。

同じことを繰り返すのが苦じゃない

メッキ作業では、同じ手順を何度も繰り返して行います。このため、毎日似たような作業をすることが多くなります。

同じ作業を続けることに抵抗がなく、むしろ一定のリズムで作業を進めることに満足を感じる人には、メッキ工場での仕事はぴったりです。一方で、常に新しいことに挑戦したいと思う人には、メッキ作業は合わないかもしれません。

もしもあなたが、繰り返しの作業に集中できるタイプで、安定した作業フローを好むなら、メッキ作業はあなたにとって理想的な職場環境と言えます。

メッキ工場の仕事に向いてない人

メッキ工場は未経験者でも働きやすい環境ですが、10年間勤務してきた中で、残念ながら「この仕事は向いていない」と感じてしまう人もいました。

メッキ工場で働くには、体力的な要素だけでなく、責任感や几帳面さ、そして周囲との協調性も重要です。

以下に、メッキ工場の仕事に向いていない人の特徴を挙げます。

体力的に自信がない人

メッキ工程には、重たい材料を持ち上げたり、立ちっぱなしで作業したりするなど、体力的な負担が大きい作業があります。体力に自信がない人は、きついと感じるかもしれません。

また、メッキ作業エリアは、換気やコストなどの理由から、全体空調設備がないのが一般的です。そのため、夏場は気温上昇による熱中症、冬場は気温変化による体調不良への注意が必要です。

責任感や集中力がない人

これは、メッキ工場に限ったことではありませんが、責任感と集中力がない人は工場勤務に向いていません。

特に、メッキ工場で扱う薬品の中には、さまざまな薬品があります。
取り扱いを間違ってしまうと、人体に影響を及ぼすガスが発生したりというケースもあります。常に高い安全意識を持ち、責任を持って作業する必要があります。

メッキ工場では、危険な薬品を扱うため、責任感や集中力が欠如していると、重大な事故を引き起こす可能性が高くなります。

体験したミスの事例

薬品の誤混合

異なる薬品を誤って混合してしまい、予期せぬ化学反応を引き起こし、有害なガスが発生した。

不適切な薬品濃度

メッキ液の濃度を間違えてしまい、メッキの仕上がりがいつもと違う。

責任感や集中力に自信がない方は、自身の能力を向上させる努力をするか、メッキ工場以外の仕事を選択することをおすすめします。

新しい刺激や変化を常に求める人

日々似たような作業の繰り返しが多いため、変化を好む人には物足りないかもしれません。

単調な作業にすぐ飽きる人

メッキ工場の仕事は、一定の作業手順を繰り返すことが多いため、新しい刺激や変化を常に求める人には向いていません。

メッキ工場では、製品の品質を安定させるために、手順書に基づいて作業を行うことが一般的です。そのため、同じ作業を繰り返し行うことが多くなります。

また、メッキ工程は化学反応や電気化学反応を利用するため、作業手順や条件を厳密に守る必要があります。そのため、自由な発想や独創性を発揮できる場面は限られます。

自分の性格や価値観をよく理解した上で、自分に合った仕事を選ぶことが大切です。

コミュニケーションを重視しない人

メッキ工場では、メッキの種類によってそれぞれの槽がありますが、前処理に使われる槽は、共有の槽があったりします。メッキの種類によっては、各槽の条件なども違うので、しっかりとコミュニケーションをとりながら作業することが大切です。

コミュニケーションを取ることが苦手、または重視しない人は、職場での人間関係に問題が生じやすくなります。

まとめ

この記事を通して、メッキ工場の仕事内容、きついと言われる理由、そしてあなたに合うかどうかを判断するためのポイントをイメージできるように解説してきました。

メッキ工場の仕事は「きつい」というイメージが先行されすぎていますが、少しは考え方も柔らかくなったのではないでしょうか。

この記事が、メッキ工場への勤務を考えるための参考になれば幸いです。